農事組合法人八尾農林産物加工組合

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事業紹介

農商工等連携事業の目標

1.新商品の内容

 本事業では、農事組合法人八尾農林産物加工組合の経営資源である「農産物の加工施設・加工技術」「地場産農産物および農産物加工品の販売ルート」と八尾ネマガリタケ生産組合の経営資源である「米・野菜などの栽培技術と山菜の収穫に関するノウハウ」「ネマガリタケの栽培を行う耕作放棄地・田畑」を活かして、地場産ネマガリタケのレトルト加工食品を開発する。

 

 ネマガリタケとはイネ科のササ類で、別名「チシマザサ」「ジタケ」とも呼ばれ、また各地では「すすたけ」「細竹」「姫竹」などの通称もある。そのタケノコは煮しめやおでんの食材として親しまれている。関東以北の山地に自生しており、北海道や東北地区でタケノコといえばネマガリタケのことを指すほど一般的な山菜である。

 

 本事業で開発する「レトルトネマガリタケ」は、清涼な雪解け水が豊富で「山菜・キノコの宝庫」と言われる八尾町大長谷地区の耕作放棄地で栽培・収穫される、柔らかくおいしいネマガリタケをレトルト加工することにより、味、香り、食感などのおいしさを可能な限り保持する一方、常温で長期間(約6ヶ月)保存できる加工食品である。

 

 現在ネマガリタケは、険しい山間地(八尾町大長谷地区)に自生しているものを採取して加工されているが、本事業では八尾ネマガリタケ生産組合が幹線沿いの耕作放棄地を利用して栽培・収穫を行うため、安定した量をこれまでより採取・運搬を労力を掛けずに低コストで生産する事が出来る。この取り組みにより、耕作放棄地の有効利用と地場産農産物の安定供給さらに計画的な加工、販売により需要拡大を図る。また、市場においてネマガリタケを含む安価な海外産タケノコが9割を占める現状において、「食の安全・安心」を強調し、さらに越中おわらで有名な八尾ブランドを付加することにより、国内自給率の向上と地産地消の推進を図る。

 

2.現状と課題

 国産のネマガリタケは栽培ではなく、主に険しい山の斜面の自生地で採取・収穫されている。高齢化が進む農業者にとっては採取地までの移動、採取の労力、そして採取後の運搬などが負担となっている。また、気候温暖化や自然資源の枯渇により収穫量が安定せず、近年は生産量が減少傾向であり小売価格も高い状況である。(100g入りパック498円、270g入り缶詰1250円など)。一方海外産の輸入品は、それに比べると著しく安価(100g入りパック100円など)で販売されており、現在国内で消費されるネマガリタケを含むタケノコの約9割までもが輸入食品となっている。「職の安全・安心」が求められる中、他の食品同様、ネマガリタケの国内自給率向上が課題となっている。

 八尾町大長谷地区でも5〜6月の期間、山間地での採取を行っているが、八尾市街地からでも車で40分ほどの距離で、そこからさらに2時間ほど登山道や場合によっては獣道に分け入っての採取となる。急勾配に自生していることも多く、高齢化が進む農業者にとって採取が困難なため近年の収穫量が減少している。また、同地区では最近の米価の下落と農業資材の高騰、さらに後継者不在のため、稲作を断念する農家が増加し、9割が耕作放棄地となり問題となっている。

 また、越中おわらで全国的に地名が浸透している「八尾」であるが農産物と言う観点ではいわゆる名産と言われるものが少なく、「八尾ブランド」を生かした農産物の地域資源開発が課題であった。

3.経営状況

 農事組合法人八尾農林産物加工組合は平成19年、既存の3つの組合が合同し設立。近隣の農業生産者と連携し、地場産野菜を原料とした加工食品の製造・販売を行っている。野菜缶詰・味噌・梅干、切り干し大根、干しぜんまいなどの製造を行う一方、そば粉、ごまなどを利用した新商品の開発・製造も進めている。

 一方八尾ネマガリタケ生産組合は、八尾大長谷地区の8人の農業者で構成する任意団体である。これまで稲作を中心として個人事業を行っていたが、中山間地における農業生産の非効率性、高齢化、米価の下落、農業資材の高騰の理由により徐々に稲作を縮小している。収益力を強化するため平成20年に設立した。

4.商品を開発するにいたった着眼点

 このような状況の中、同地区の活性化を目的に、感染沿いにある耕作放棄地を利用したネマガリタケの栽培がスタートした。ネマガリタケは成長成分が豊富で生育期間が短期間であり、また栽培や収穫に大型機械を必要としないため、稲作などに比べ農業者の栽培の手間、コスト、そして設備投資がかからないと言う優位性がある。これまで、畑地を利用してのネマガリタケ栽培を試みた生産者もいたが、育苗技術・栽培技術が未熟であったため安定した収穫にいたらなかった。本事業において、竹類の栽培技術を専門とする富山県立大学の荻田講師の技術指導を受けられることになり、安定した生産体制の構築を目指す。

 一方、農事組合法人八尾農林産物加工組合は今年、八尾大長谷地区で採取・収穫されたネマガリタケを原料として約2000個の缶詰生産を行い、その柔らかさ、味の良さで消費者に評判となったが、一部の製品において製造・加工方法の不備により、品質の低いものが発生、クレームとなった。品質安定化のため、富山県農林水産総合技術センター食品研究所の技術指導を受けることとなり、またさらに、高品質の商品開発を行うため、レトルト加工の共同開発を進めている。

 輸入品の安全に関する問題が多発する中、地場産野菜を原料とした加工食品のニーズが高まり、特長アル加工食品の開発が求められている状況を受けて、八尾ネマガリタケ生産組合による耕作放棄地を利用したネマガリタケ生産と、農事組合法人八尾農林産物加工組合によるネマガリタケの加工・販売の連携体制が整い、八尾町の特産品開発がスタートした。

5.本事業で取り組む内容

 本事業では、これまでの取り組みを踏まえ、八尾産ネマガリタケの有する独自の柔らかさ、味の良さを保持したまま、常温で長期間保存可能な「レトルトネマガリタケ」を開発し、国産のネマガリタケをこれまでより安価に提供する。また、耕作放棄地でネマガリタケを栽培することにより、長さ・太さなどの調整による品質の向上、および生産量の安定した供給体制を確立し、農業者の経営基盤の安定化と生産に担い手の確保・育成を図る。さらに保存技術の向上により、通年の計画的な商品供給体制を確立し、八尾産ネマガリタケのブランド構築、および全国的な市場拡大を図る。

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農商工等連携事業の内容および実施期間

1.計画実施期間

平成20年12月1日〜平成25年3月31日

2.農商工等連携事業の内容
・経営資源の活用

 本事業では、農事組合法人八尾農林産物加工組合の経営資源である、「農産物加工施設・加工技術」「地場産農産物および農産物加工品の販売ルート」と八尾ネマガリタケ生産組合の経営資源である「米・野菜等の栽培技術と山菜の収穫に関するノウハウ」「ネマガリタケの栽培を行う耕作放棄地・田畑」を活かして、原料の安定供給体制から市場動向や需要に応じた生産〜加工〜販売の一貫システムを構築する。

 また、連携参加者においては、富山県立大学工学部生物工学科の植物分野におけるバイオテクノロジーや圃場における竹類の栽培技術と、富山県農林水産総合技術センター食品研究所のレトルト加工技術を活用することで事業の実効性を高める。

・新商品又は慎役務の開発、生産、(提供)または需要の開拓の方法

 本事業では、これまでの取り組みを踏まえて、今後5年間にわたり、安心・安全な国産のネマガリタケ栽培により、価格面および供給量において安定した供給体制を確立することで、主要顧客として想定している一般家庭需要の更なるニーズの把握に努め、ユーザーや取引業者を通じた製品の改善を図る。さらに、惣菜・炊き込みご飯・おせち料理など、国産の良質なネマガリタケを必要とする業務用チャンネルの開拓を図る。

・中小企業者の経営の向上および農林漁業者の農林漁業経営の改善方法

 本事業を通じて、主たる購買層を想定している一般家庭の顧客満足度をその品質と価格において高めることにより需要拡大を図るとともに、業務用チャンネル開拓を図ることにより当組合の収益に貢献する事業の柱にすることで、目標に掲げる経営の向上を実現する。あわせて原料供給者である八尾ネマガリタケ生産組合の供給量の増加、品質の向上および生産者確保により農業経営の改善を実現する。

3.市場ニーズ・市場規模、競合する類似商品・役務との相違点
・市場ニーズ

 山菜は地域性や希少性があるため、生産者によるインターネット販売も積極的に行われており、簡単に検索をしただけでも20社以上が確認できる。また楽天市場でも500件程度の商品が確認できる人気食材である。

 そのなかで比較的上位に検索される事業者2社の人気ランキングにおいてネマガリタケが1位となっている。特に青森県白神山地の「天然山菜」HPでは2007年のネマガリタケ出荷量800kgと記載されており、その量から人気度の信憑性が高いデータと思われる。

 ネマガリタケはチロシンとアスパラギン酸などのアミノ酸を豊富に含み、タケノコの中で最もおいしいとも言われる。また、チロシンは神経伝達物質の原料となるアミノ酸である。ネマガリタケ自体の育成が早いのもこの成分のおかげである。

 さらに栄養成分として、ビタミンB1・B2・Cを初め、カリウミ、カルシウム、鉄瓶、マグネシウム、亜鉛、銅などのミネラルが豊富であり、しかも食物繊維が100gあたり3.2gと、レタス約25枚分に相当する量が豊富に含まれている。健康に留意する層が増えている現在、多種多様なメニューを提案するのに最適な食材としてニーズを広げていくことが可能と考えられる。

・市場規模

 本製品の国内生産量は、林野庁のデータによると平成9年の5,265トンをピークに減少を続けており、現在ピーク時の3分の1以下にまで落ち込んでいる(図表1)。その原因として、自生量の減少、収穫者の高齢化といった要因と共に、輸入量の大幅な増加が大きな部分を占められていると考えられる。前述の通りネマガリタケを含むタケノコの輸入食品の割合が全体の9割を占めており、その輸入食品の現状のシェアを、栽培による国産製品で塗り替えていき、国内自給率を回復させていく意味で充分な市場規模と言える。

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農商工等連携事業の内容および実施計画の内容

実施計画の概要

次のような工程で事業を進めることとしている。

■1年目:平成20年12月〜平成21年3月

1.製品の改良・性能評価
 生産組合では育苗研究を行うとともに、耕作放棄地の積雪上に堆肥を段階的に量を変化させて施し、効果的な施肥方法の研究を行う。
 加工組合では、ネマガリタケに適したレトルト殺菌の温度と時間の条件検討、賞味期限設定のための保存試験を行う。
2.販路開拓
 既にネマガリタケ缶詰の販売実績がある、地元量販店や直売所(八尾ゆうゆう館、いきいき物産)に対して、情報提供やニーズ確認などのマーケティング調査を行う。
3.事業PR
 事業内容、商品内容や連携体制などを県内マスコミでPRし周知を図る。また直売所でサンプル品による事前PRを開始する。

■2年目:平成21年4月〜平成22年3月

1.製品の改良・性能評価
 生産組合では耕作放棄地で自生しているネマガリタケを試験採取するとともに、耕作地整備のため間引きを行う。さらに、栽培地を広げ、施肥技術、育苗技術の試験を継続する。
 加工組合では、試験採取したネマガリタケをレトルト加工し試験販売を行う。また、通年供給が出来るよう、大型缶詰による一時保存技術の研究を行う。
 あわせて、レトルト加工の改良、保存試験の継続、包装材の選定、パッケージのデザイン検討を行う。
2.販路開拓
 既存取引先の地元量販店には、関係者試食会、試験販売商品説明会などのテストマーケティングを行い、評判や生産可能量に応じて県内全域での販売を検討してもらう。また同時に、同業他社にもアプローチを行う。直売所(八尾ゆうゆう館、いきいき物産)では地元の名産として拡売を行う。
3.事業PR
 県内での商談会や展示会(「越中とやま食の王国フェスタ」など)、そしていきいき物産有楽町店(東京)等への出品機会を積極的に活用して、事業の周知に努めることで、営業活動を補強する。八尾地区や富山市、富山県の観光パンフレット、観光記事などでの露出を検討する。

■3年目:平成22年4月〜平成23年3月

1.製品の改良・性能評価
 生産組合では、栽培技術を確立させ、栽培による生産を本格かさせる。次年度の生産量大幅増大に向けて施肥技術、育苗技術の改良を行う。
 加工組合では、生産量増大に対応した加工作業の効率化や不良率低減のための研究を行う。あわせて、レトルトネマガリタケの品質向上のための研究を行う。
2.販路開拓
 既存販路に関しては継続的に販売量増加を図る。新規販路として富山県および近隣県のホテル・旅館・みやげ物販売店・道の駅での販売や業務利用の拡充を検討する。また八尾地区関連のイベントでの販売や素材使用などを徹底し、八尾ブランドを活用する。
 また、県内食品企業への高級食材として、惣菜・炊き込みご飯・おせち料理などへの活用を提案する。
3.事業PR
 補助金を活用して、食品産業センターが主催する「こだわり食品フェア2010」(東京)や「ネクストフーズいしかわ」(石川)に出展する。また首都圏での出展会やテストマーケティング・ショップ等への出展機会を積極的に活用して、事業の周知に努め、営業活動を補強する。

■4年目:平成23年4月〜平成24年3月

1.製品の改良・性能評価
 生産組合では、栽培・収穫技術を確立させ、需要に応じた増産を実現させる。また販路別で望まれる大きさ・太さの作り分けの技術を研究する。
 加工組合では、引き続き生産量増大に対応した加工作業の効率化や不良率低減のための研究を行う。さらに、味付け商品の開発、新たなパッケージデザインの検討を行う。
2.販路開拓
 既存販路に関しては継続的に販売量増加を図る。新規販路に関しては、高級食材として、全国的な販路開拓を検討する。
 また、引き続き県内食品企業への高級食材として、惣菜・炊き込みご飯・おせち料理などへの活用を提案する。
さらに、インターネット等を通じた直接販売についても検討する。
3.事業PR
 引き続き、首都圏や県内外での商談会・出展会やテストマーケティング・ショップ等への出展機会を積極的に活用して、事業の周知に努め、営業活動を補強する。

■5年目:平成24年4月〜平成26年3月

1.製品の改良・性能評価
 生産組合では、栽培・収穫技術を確立させ、需要に応じた増産を実現させる。
 加工組合では、引き続き生産量増大に対応した加工作業の効率化や不良率低減のための研究を行う。あわせてHACCP対応の生産を目指した生産体制の確立を進める。
2.販路開拓
 既存販路に関しては継続的に販売量増加を図る。新規販路に関しては、高級食材として、全国的な販路開拓を検討する。
 また、引き続き県内食品企業への高級食材として、惣菜・炊き込みご飯・おせち料理などへの活用を提案する。
3.事業PR
 引き続き、首都圏での商談会やテストマーケティング・ショップ等への出展機会を積極的に活用して、事業の周知に努める事で、営業活動を補強する。

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